【八王子市】八王子八日町の由美ちゃん本になる!「小説ユーミン」は八王子の歴史本みたいな濃い内容

17歳で作曲家としてデビュー以来、現在に至るまで日本の音楽シーンを牽引してきた八王子市八日町出身のシンガーソングライター「松任谷由実」さんの少女時代を、作家「山内マリコ」さんが小説で描き出したマガジンハウス発行の「すべてのことはメッセージ 小説ユーミン」
ユーミンのデビュー50周年を記念して2022年10月27日に発売されます。
ユーミンの本
初めてこの「すべてのことはメッセージ 小説ユーミン」が出版されると聞いた時は、松任谷由実さんのサクセスストーリーかと思いました。
しかし、読んでみるとこれはすごい本!読み応えがハンパありません。
幼少期から10代でデビューするまで、あの名曲「ひこうき雲」ができるまでを、松任谷由実さんへの取材をもとにフィクション化するのは初めてとなります。荒井呉服店

あらすじ

1970年代、シンガーソングライターとして十代でデビューを飾った荒井由実。のちに日本最大の女性ポップスター、松任谷由実=ユーミンとなる煌めく才能はいかにして世に出たか――。八王子の裕福な呉服店に生まれ、ピアノに触れ、清元を学び、ミッション系の私立女子校に入学。グループ・サウンズが一世を風靡するなか、由実は高度経済成長期の東京を、好奇心いっぱいに回遊しはじめる。米軍基地、ジャズ喫茶、伝説のミュージカル『ヘアー』、大人の社交場キャンティetc.……次々に新しい扉を開けて、才能を開花させていく。少女・荒井由実のデビューまでの軌跡をノンフィクション・ノベルとして描き出す。    
名曲「ひこうき雲」が生まれるまでーー

ユーミンの本

画像提供:株式会社マガジンハウス

 夏休みに入ると毎日のように浅川へ遊びに行った。 由実の腰の高さまで生い茂った草を、かき分けかき分けずんずん進むと、川風はびっくりするほどひんやりとして気持ちがいい。 焼けた石は裸足にちりちりと熱く、 由実は慌てて川に飛び込む。 パシャパシャ水をかけ合い、たっぷり太陽を浴びて疲れるまで川で過ごし、家に帰ると蚊取り線香を焚いた部屋でぐった りと昼寝するのだ。目を覚ますころにはヒグラシの鳴き声が聞こえた。                         八王子では大掛かりな七夕まつりが開かれる。ここらの氏神様である八幡八雲神社の下(しも)の 祭りでは、毎年立派な彫刻山車を引くが、おととしの市民祭以来、 仙台の七夕まつり風に大きな吹き流しの飾りを吊るしたり、笹を飾ったりと、それはそれは盛大だった。祭りには戦後に八王子に移ってきた新しい住民との交流の目的もあるようで、由実も短冊に願いごとを書いたり、ちり紙で花の飾り付けを作ったりして手伝った。 七夕まつり当日、甲州街道で仮装行列のパレードが行われた。『番頭はんと丁稚どん』の仮装をした荒井呉服店の従業員が店の前を通り過ぎると、由実たちは大笑いで喝采を送った。(本書P84からの引用)

昭和29年(1954年)生まれの荒井呉服店のお嬢さん、由美ちゃんは、八王子市立第一小学校に通っていました。

この本は戦前からの織物景気に湧いていた八王子の街の様子なども生き生きと描かれ、きめ細やかな取材と裏付けに基づいた文章は、松任谷由実さんのファンはもとより、八王子に興味がある方も満足する内容です。

ユーミンの本

著者の山内マリコさん 画像提供:株式会社マガジンハウス

由実はポッポを出て、コープオリンピアを横目に駅まで歩き、山手線で新宿まで行くと、 中央線に乗り換えた。人のまばらな車内でうとうとまどろむこと小一時間。多摩川を越え、 朝霧のかかる浅川を過ぎ、由実はようやく八王子に帰る。このあたりは都心よりもぐっと気温が下がるし、天気だってずいぶん違う。東京はカラッと晴れていても、八王子に戻ると霧雨が降っていたり、霧が出ていることもしょっちゅうだった。じっとりと水分を含んだ濃い空気が肌に触れると、由実は、ああ、生まれた街に帰ってきたんだなぁと思う。 けれど、今日一日は、ここからはじまるのだ。(本書P263からの引用)

都心から八王子に帰る時、中央線でも京王線でも川を渡らないと帰れません。ちょっと長い乗車時間が、自分に戻る時間を与えてくれるようです。

由美ちゃんは中学校から電車通学をしていたので、何回この川を渡ったのでしょうか。

浅川

浅川

著者プロフィール

山内マリコ(やまうち・まりこ)1980年、富山県生まれ。2008年に「女による女のためのR‐18文学賞」読者賞を受賞。12年、初の単行本『ここは退屈迎えに来て』を刊行。ほかの著書に、21年映画にもなった『あのこは貴族』や『一心同体だった』などがある。

松任谷由実さんが本書に寄せたコメント

これはノンフィクションというより、ルポルタージュに近いかもしれない。
山内マリコさんの獰猛な取材力とインタビューに、記憶のボタンが次々とクリックされ、
私は幼少期を、青春を、サーフィンしまくった。目眩く楽しかった。
これは多くの人たちが好きなサクセスストーリーの真逆だから、全くシンパシーが
得られなかったとしても仕方ない。
正に、”事実は小説よりも奇なり”。
ひとりの特異な少女が、50s、60s、そして70sの、
東京カルチャーとカウンターカルチャーに彩られ、特異なまま大人になってゆくお話。
山内さんの大いなる好奇心が、私自身もすっかり忘れていた愛を、思い出させてくれた。
こんな機会を与えていただけて、本当に良かったと思う。
つくづく私は、”ユーミン”以外のものにはなれなかったのだなあと、
覚悟とも諦めともつかない幸せな気持ちで、この小説を読み終えた。
                               ーー松任谷由実

書名  :すべてのことはメッセージ 小説ユーミン
著者  :山内マリコ
発売日 :2022年10月27日(木)
価格  :1980円(税込)
仕様  :四六判並製
ISBN:978-4-8387-3224-1
発行  :株式会社マガジンハウス

ユーミンのアルバムには、都心から八王子付近の風景が折り込まれた曲も数多くあります。松任谷由実さんのデビュー50周年を記念したNEWアルバム「ユーミン万歳!」を聴きながら、「すべてのことはメッセージ 小説ユーミン」を読む。そんな豊かな気持ちになれる秋の日もいいですね。

八王子やユーミンが好きな方には、特におすすめしたいスペシャルな1冊です。

ユーミンのルーツ 荒井呉服店はここ↓

Feet and head

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